「だまされる人」は何度も被害に 投資詐欺の最新手口


友人から勧誘され、「元本保証で高配当」をうたう事業に投資しました。多少、うさん臭い感じがして最初は少額で始めましたが、すぐに配当があったので安心して投資額を増やしました。ところが、返済が滞り始め、ついに連絡がつかなくなりました。老後のためにためていた大切なお金で、直ちに全額返してほしいのですが、どうしたらよいでしょうか。


「よくわからない権利」への投資話が増加


これはいわゆる投資詐欺の一種ではないかと思われます。残念ながら、出資したお金は返ってこない可能性が高いでしょう。 投資詐欺はいつの時代にも人々のお金を吸い上げようとしています。高配当は確かに魅力的に映るでしょうが、世の中、完璧にうまい話は絶対にありません 3月、マレーシア企業が運営する会員制の交流サイト(SNS)の広告権を買えば電子クーポンを得られ、資産を増やせると虚偽の説明をしたとして主催者が逮捕されました。 また、2月には1口100万円の入会で月利3%を約束して資金を集めていた「KING」を自称する事実上の主催者らが逮捕されています。 報道によると、いずれもセミナー会場での派手なパフォーマンスで、人とカネを集める「劇場型」詐欺とみられているようです。SNS広告権はスキームの不明確な「よくわからない権利」への投資話であり、「KING」のケースに至っては、各報道をみても何に対する投資をうたっていたのかすらわかりません。 投資詐欺といえば、未公開株や社債が「定番」でしたが、SNSの広告権のように、最近は「え? そんな権利があるの?」と思うような「よくわからない権利」への投資話をツールに用いるケースが増えてきています。


典型的な手口「ポンジ・スキーム」


ツールは変われど、最初に配当を出して安心させるのは「ポンジ・スキーム」と呼ばれる典型的な投資詐欺の手口です。 ポンジ・スキームとは、出資してもらった資金について実際には運用をしていないにもかかわらず、別の出資者から新たに集めたお金を「配当金」と偽って交付し、あたかも資金が運用され、配当されているかのように装うやり方です。 「ポンジ」というのは第1次世界大戦後に現れた詐欺師の名前だそうですから、このような詐欺の歴史がいかに古いかわかりますね。投資の運用実体がないわけですから、最終的には配当金が枯渇し、必ず破綻することは火を見るよりも明らかです。 「KING」の件では月利3%が約束されていたとのことです。月利3%といえば年利36%になります。時価総額日本一の企業であるトヨタ自動車の配当利回りは年利でおおむね3%ですから、かなり高額な利息の約束です。 ただ、年利36%というのは絶対にありえない利回りではありません。そこがワナだと思います。一昔前に年利300%や500%を保証する詐欺話(つまり元本が3倍、5倍になる)が横行していたことに比べると、より「現実性」を持たせただましの手口といえます。


投資詐欺、出資法違反がほとんど


これら投資詐欺は法律上ももちろん違法です。まず、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」に違反していることがほとんどです。 出資法では不特定かつ多数の者に対し、出資の払い戻しとして、元本を保証して資金の受け入れをすることや、正規に認可を受けた金融機関以外が不特定かつ多数の者から預金・貯金・定期積金の受け入れをすることを禁止しています。 あなたの投資した事業は元本が保証されているそうですが、冷静に考えてみてください。元本の「保証」は誰がしてくれるのでしょうか。その主体が倒産してしまったら結局、元本など返ってくるはずがないのです。 銀行が破綻した場合ですら、利息のつく普通預金・定期預金などの1000万円までしか保証されません。そして、銀行の場合に1000万円まで預金が保護されるのは、銀行が保険をかけ、預金保険機構という別の組織が保証しているからなのです。


登録業者が詐欺を働く例も


また、本来、金融商品の販売は証券会社など内閣総理大臣に申請、登録を受けた業者でなければ行えません。投資詐欺のケースのほとんどは無登録業者が主体になっています。「ほとんど」と書いたのは、登録業者であっても詐欺を働く例があるからです。 例えば、アメリカの医療機関が保険会社に診療報酬を請求する権利(診療報酬請求債権)を買い取って回収する「MARS投資」を運営し、その後破綻した米国法人は金融商品取引業者の登録を受けていました。 しかし、逆の場合に例外はありません。無登録業者が投資を勧める行為はそれ自体が違法で、絶対にその話に乗ってはいけません。 もし不幸にしてこのような投資詐欺に引っかかった場合、どうすればよいのでしょうか。このような被害者の多くがまず警察に相談します。確かに、世間の注目を集めた大型詐欺事件では警察が動くこともあります。 しかし、個々の被害者が「だまされた」と言って警察署に相談しても、詐欺事件は立証が難しく、警察としても単に主催者の配当金の支払いが遅れているだけ、つまり民事上の債務不履行との可能性が払拭し切れない以上、民事不介入の原則により事件として扱えない場合が多いのです。 「そんなことはない! これはきっとポンジ・スキームに違いないから立ち入って調査してくれ」とお願いしても、警察は見込みだけで捜索押収令状をとることもできません。


管財人や弁護団名乗る「二次被害」が発生


では、民事事件で返還を求めることはどうでしょうか。冒頭に私は「出資したお金は返ってこない可能性が高い」と厳しいことを書きました。もちろん、民事上の返還請求などによりいくばくかのお金が返ってくることはあるでしょうが、全額が返還されることは残念ながらまずありません。 このような投資詐欺会社が破産すると、裁判所から破産管財人が選任されます。破産管財人に対し「直ちに全額返せ!」と強い調子で迫る債権者もいますが、債権を全額返還できるならそもそも破産する必要がないわけですから、これは到底無理な要求です。これは被害者弁護団などに返還を相談する場合も同じだと思います。こうした事件に精通している被害者側の弁護士は、被害者に対して決して甘い見通しを示すことはないはずです。 ところが、これに付け込んだ二次被害が発生しています。破産管財人や被害者弁護団の名を語り、言葉巧みに被害者に「配当金が全額支払われることになった。そのために手数料がかかる」などと申し向け、さらに金銭をだまし取る手口があるのです。 被害者の連絡先を知っているのは、詐欺グループ間で被害者の名簿が流通しているからです。つまり、だまされる人は何度も何度もだまされてしまうのです。厳しい意見を無視し、聞こえの良い話だけを聞いているとさらに被害が拡大します。不幸にして詐欺事件に遭ってしまった場合、最大の防御策は「二度とだまされないこと」なのです。




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